【連載】橘めいの『いつだってファイティングポーズ』
第12回 花柄スカートのリミット
歌舞伎町のホストクラブに行くのに区役所通りで友達と待ち合わせをした。
店に入ったあとで友達が「さっきめいさんを待ってる時に思ったんだけど、
通る女、通る女、みんっな、花柄のスカートを穿いてるの!!」
と、驚きを隠せずに言った。
(ホストクラブに関する話はまた今度。笑)
「え?花柄?そんな女いる?みんなって大げさじゃない??」
とあたしは言ったのだけど、目に入っていないのはどうやらあたしだけで、
お店の男の子達も「いるいる!いっぱいいるよ!」と口々に言うのだった。
花柄って小花柄のヒッピーみたいなスタイル?それともクラシカルな大花柄?
あまりにもイメージが湧かないので、ネットで検索した画像を見せてもらった。
あたしがイメージしてた花柄とは、まるっきり違っていた。
あーこれね・・・なんか、包装紙みたいな花柄ね・・・。
そんでもってフリルとかリボンとかシフォンとかが過剰でお腹いっぱいなやつね・・・
そうね、パフスリね。
基本は、ペールカラー(ホワイト、パステルブルー、パステルイエロー、
パステルピンク、パステルパープル・・・パステルのおばけ!)
のニットとかブラウスに、ぼやーんとした水彩画みたいな大花柄のフレアミニスカート、
髪は巻き髪、薄いブルーのデニムジャケットを羽織って。
もしくはビジューが襟元に付いたカーディガン!みたいな。
いいんです。若ければ、いいんです。
(25くらいまでかなぁ・・・ギリギリ27とかかなぁ。甘すぎ?)
でも、これをあたしの世代(30過ぎ)の女がやっていた場合・・・
想像してみて?ホラーよ?
でも、いるんです。どうやらいるみたいなんです!
(あたしの周りには幸いいないんですが。)
なんでこの恰好を30過ぎた女がやるとホラーなんだろう。
なんであたしはすべての女たちが自分らしく自由に人生を謳歌することを応援しているくせに、こういう恰好をしているいい歳した女に対して腹立たしい気持ちになるんだろう。
ということを自分なりに分析してみた。
アリ・セス・コーエンというカメラマンが、NYのオシャレなおばあちゃん達を撮った
『Advanced Style--ニューヨークで見つけた上級者のおしゃれスナップ』(大和書房)
という写真集がある。
それぞれに個性的でズバ抜けてオシャレなのはもちろんのこと、
本当にみんな年齢を飛び越えた美しさがあって生き生きとしていて、
見てるだけですごく元気になれる。
この本に出てくる60オーバーのマダム達は、自分の手で人生を切り拓いてきた感じがする。
人生の様々な場面で、自分のムードに合った服を、自分の手で選び取ってきた感じがする。
ファッションというのはその人のその時のマインドを表す、とあたしは思っている。
だって洋服というのは顔や体と一緒だ。
「オシャレに興味なーい!」という人は「興味がない」というマインドを、
着る服によって表している。
「なんでもいい」と言う人もたまにいるけれど、なんでもいいわけじゃない。
絶対に、無自覚に「なんでもいい」というマインドの服をチョイスしている。
「なんでもいい」と言う人はきゃりーぱみゅぱみゅみたいな服は選ばないし、
胸元ががっつり開いた服やタイトなミニスカートなんかは穿かないだろう。
じゃあ、花柄スカートを穿く女のマインドは何かっていうと、
「男に(自分を)選び取ってほしい」というマインドなんだよね。
「これかわいいよね?」「女の子っぽいよね?」「モテるよね?」というマインド。
「これがあたし!」というような主張はそこからは感じられない。
「モテたい!」という意思を悪いとはまったく思わない。
あたしもモテたい。
いわばモチベーションである。
だけどここで言う「花柄のスカートを穿く女(加齢した)」にあたしが異を唱えたいのは、そういった女たちが「男に選ばれる自分でありたい」という思考でその服を手に取っていることに『無自覚』に見えるからである。
「若さ」とは『無自覚』であることに他ならない。
自分の社会的な立ち位置がどこなのか、人からどういう風に見られているかということに対して、まだ意識が低い。
だから、若い女の子がそういう恰好をするのはまあ仕方がない。
だけど、20代も後半になってきて自分自身に無自覚でいたら、
それはただの『無知(バカ)』である。
で、この『無知』を好む男が一定数いる。
いわゆる、女に人格を求めない男である。
「女」はただ主義主張のない、名前のない「女」であればいいと思っている類の男である。
こういう男に選ばれたところで、その行く末はたかが知れてる。
それは、あたしの目指す「女を謳歌する」こととは程遠い人生だ。
経験を積んで知恵もある大人の女は、自分という人間がどう見られているのか、
そしてこれからどういう人間になりたいのかということに対して
自覚的にならなければいけないんだよ。
だってそれこそが加齢した女の、若い女にはない魅力じゃん。
さあ、花柄のスカートを脱いで、ビビらずに、ババアになるのだ。
◆ライタープロフィール
橘めい
『Ladies Motivation Project』代表
(通称LMP=すべての女たちがそれぞれ自分自身の美しさを肯定し、ありのままの自分を謳歌し、生き生きと力強く楽しんで生きることを応援するプロジェクト。)
モチベーター/ライター/イベントプランナー
男と女、恋やセックス、女の自意識と加齢などについて日々考え続けている33歳。酒と映画と男をこよなく愛しています。パワースポットは歌舞伎町(二丁目含む)。一応、一児(6歳男子)の母。
BLOG /『ハレンチには程遠い』
X / @TachibanaMay
提供:GIRL’S CH